

最近店で注文が多いのがクラフトビールだ。
少し前に雑誌で紹介されたという事もあり、
特に注文が多いビールが百也酒造の展開する《HYAKKOBEER》である。
百也酒造とは京都にある老舗の酒造メーカーで、
初代がこの店をオープンする以前から親交があったらしい。
つい先日、百也酒造の五代目が六代目へと代替わりする旨の連絡があったのだが、
私はその連絡をもらった時、失礼を承知で懸念を申し上げた。
当時、初めて会った六代目は、私には中々理解に時間のかかる出立ちと態度だった。
髪の毛はつむじを中心に三色に分かれ、
全身真っ黒で異常な生地分量の洋服を身に纏っていた。
やけに目鼻立ちがはっきりとしていたところを見ると、
恐らくメイクもしていたのではないだろうか?
挨拶をしてもどこか意識が曖昧で、周囲に世紀末的な印象を与えていた彼が社長か、
と私は不安を隠せずにはいれなかった。歳もまだ四十にも満たないはず。
出たち云々を差し置いても、一般的に言えば老舗名店の社長としてかなり若いだろう。
『大丈夫、まぁ直接会ったら納得してくれる筈だから』
そう電話口で笑う五代目に調子を狂わされながら、
正直これからの取引もどうしたものかと考え始めたその時、
オープン前の店内にチャイムが鳴り響いた。
失礼と電話を中断し扉を開けると、
「お久しぶりです」
初めて会う筈のその男は直角にも近い角度で頭を下げた。
「どなたでしょうか?」
私の問いに勢いよく頭を上げると男は言った。
「百也酒造の六代目です、ご挨拶にあがりました」
落としそうになる電話を持ち直し、五代目に状況を問いただす。
詳しくは割愛するが、それなりに無茶をしたとの事で、背筋が冷たくなるのを感じた。
なんでも彼が百也酒造として初めてのクラフトビールを企画したそうで、
それをきっかけに六代目へ襲名も決めたそうだ。
説明もヤボだから飲んで決めてくれ、と言い残し電話は切られた。
呆気に取られる私に、早速とビールを勧めてくる六代目。
お世話になった五代目の面目もある。
私はゆっくりとグラスに口をつけた。
すぐに不安を吹き飛ばされた私は黙って右手を差し出すのだった。
百也酒造 六代目
AP24004




ANYOPARLOR
HYAKKOBEER
Size M.L.XL
Material Cotton 100%
Price ¥



