ユニホームを着た男
「ヤー、ハロー」
「ハロー、ラーラ。久しぶりだね」
「先週も電話したでしょ」
「僕には長いよ」
定期的に変わる一連の流れで言葉を交わすと、砂嵐音に切り替わる。
10秒カウントしたタイミングでコードボタン
「1 8 4 4 1 9 0 0」を1秒間隔で押すと、5秒後にけたたましい雑音が消える。
「ハロー エリーク ご機嫌はどうだい?」
一点、声の主は初老の、だけど背筋を強制的に伸ばさせるハリのある声へと変わる。
《ご機嫌》というのはつまり、手掛かりは見つかったかという事。
「ハイ、パパ、今日も最高さ」
《最高》つまり何も見つかっていない、平和なもんだと言う事。
僕らの仕事は何か見つかったら、それは大体最悪か、それの一歩手前だからね。
「そうか、頑張って早く顔を見せに帰ってこいよ」
つまり、、、まぁそのままの意味さ。
あからさまに不満を含む声に、パパも上に相当怒られているのかもね。
さっさと私の不安の種を見つけて帰って来いと。
そういうことだ。
僕がこの「ANYOPARLOR」にホールスタッフとして潜入して2ヶ月。
ここでは毎日何かしら事件は起こるけど、僕が今まさに袖を通す
このユニフォームシャツとは関係ないことばかりだ。
国ではシークレットとなっている、半年前の大統領襲撃事件。
僕はそれを探っている。
いわゆるエージェント、スパイだ。
襲撃の犯人は狡猾で、近場の防犯カメラは殆ど黙らされていた。
唯一の証拠は、逆方向を向いていたカメラに収められた鏡の中。
そこに薄く映っていた犯人が着ていた上着の柄だ。
ようやく解析が終わり、辿り着いたのがこの店とスタッフの着る
ユニフォームシャツの両胸に踊る謎のバードの柄、、、というわけだ。
仕事は単純で何か手掛かりを見つけて報告。
もしくは犯人の特定と拘束。
場合によっては、、、まぁ、そういう事だ。
「…またな」
少しの間の後に電話乱暴には切られ、定期連絡は終わった。
「フランク、休憩中申し訳ない、団体がお見えなんだ。手を貸してくれ」
電話を切ると同時に、示し合わせたように休憩室の扉が開く。
普段クールなボスの額に汗が薄く滲んでいた。
「わかりました、すぐに行きます」
僕はそう言い、立ち上がりながら思う。
ここの人達は皆いい人達ばかりだ。
願わくば、今日も、これからも《最高》な日々が続く事を祈っているよ。
AP24007
ANYOPARLOR
Sweet Fruits and Snakes
Size M.L.XL
Material Cotton 100%
Price ¥